急低下する生産年齢人口比率をどうみるか ~3~4年後には戦後すぐと同じ水準に
2015.06.01戦後すぐと同じ時代が今そこに
15~64歳の年齢層は、一般に「生産年齢人口」と呼ばれる。働き手の主力として想定されている年齢層だ。高校、大学期を含むので、必ずしも今の時代になじまない面があるが、世界共通の尺度として用いられているものなので、本稿もこれに準拠しよう。ちなみに、0~14歳は「年少人口」、65歳以上は「高齢者人口(または老年人口、老齢人口)」と呼ばれる。
参考は、日本の生産年齢人口比率――総人口に対する生産年齢人口の割合――および年少人口比率、高齢者人口比率の推移をグラフ化したものである。
生産年齢人口比率は、1990年代前半に過去最高の70%弱に達した。この時期、1940年代後半に誕生した団塊世代が40歳代半ばを迎え、さらに、その子どもである団塊ジュニア世代が生産年齢人口に加わった。働き手の比率が最も高かった時代である。
しかし、生産年齢人口比率はその後急激に低下した。昨年(2014年)の同比率は61%を記録し、1950年代半ばと同じ水準となった。1990年代前半のピークからわずか20年強で、40年分遡った計算となる。
さらに、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2017~18年頃には生産年齢人口比率は60%を割り込み、戦後すぐの1940年代後半の水準に戻ることになる。
当時は、戦争で貴重な働き手を失ったあと、多数の子どもが生まれ、数少ない働き手で多くの人口を養わなければならない時代だった。当時と今とでは年少人口と高齢者人口が完全に入れ替わっているが、数少ない働き手が多くの人口を養わなければならないことに変わりはない。
さらに、2030年代になると、生産年齢人口比率は58%を割り込み、過去100年に経験のない領域に入る。
(参考)生産年齢人口比率、年少人口比率、高齢者人口比率の推移
(注1)2014年までは実績。2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所の推計による。
(注2)1941~43年はデータが存在しない。
(出典)総務省統計局「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成24年1月推計)を基にNTTデータ経営研究所が作成。
64歳を生産年齢人口の上限とすることに無理がある
上記の生産年齢人口比率の動きは、人々が長寿になり、高齢者人口が増えたことと、少子化の結果、生産年齢人口への供給が減り続けてきたことの帰結である。
このグラフをみれば、年金や医療などの社会保障制度を現行のまま維持することがたいへん難しいことは直感的に理解できるだろう。戦後すぐは本当に働き手の数が少なかった。今やその頃と同じ比率に戻りつつある。高齢化は、これからの話ではなく、すでに起こってきた出来事である。
結局、「生産年齢人口」の上限を64歳とすることに無理がある。もちろん、用語の使い方に問題があるのでなく、現実の社会で、「65歳」を引退のメルクマールとすることに無理があるということである。少なくとも60歳代後半の人々には働き手として活躍し続けてもらわなければ、経済も財政もうまく回っていかない(2013年9月「70歳まで働いて帳尻を合わせよう」、2015年1月「なぜ私たちは70歳代まで働かねばならないのか」参照)。
以 上
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