金融経済イニシアティブ

山本謙三のコラム・オピニオン

山本謙三による金融・経済コラムです。

 

日本銀行は、7月末の金融政策決定会合で、長期金利の変動幅を拡大させるとともに、「政策金利のフォワードガイダンス」を導入した。「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」という内容だが、過去のガイダンスとは性格が異なる。なぜ、どう変質したのか。

相続で預貯金はどう動くか ~目立つ東北、山陰、四国からの流出、沖縄、東京への流入

2018.08.22

4分の3の県から預貯金が流出する

5年前、相続の増加に伴い、預貯金がどう地域間移動するかを試算した。

本年春、国立社会保障・人口問題研究所が、2015年の国勢調査に基づく新たな地域別将来人口推計を公表した。これを踏まえて、35年までの県外流出入を改めて試算してみた(参考1)。

以下は、山本謙三がNTTデータ経営研究所在勤中に同社ホームページに掲載したものです。

なぜ転出・転入届をそれぞれの役所に出さなければならないのか ~ブロックチェーンが示唆する台帳共有のメリット

2018.06.01

ブロックチェーンの基盤:分散型台帳

ブロックチェーンは、仮想通貨を支える基礎技術だ。その基盤は「分散型台帳」にある。

ブロックチェーンでは、ノードと呼ばれる主要参加者のコンピュータをネットワークでつなぎ、その上に台帳が保管される。各コンピュータ上の台帳の内容は共通で、取引が起こる都度、すべての台帳に追記がなされる。分散型とはいえ、台帳を共有しているのと同じだ。

トランプ大統領は何を誤解しているのか ~劇的に変わる日本の国際収支構造

2018.05.07

「こんなに長い間、米国をだませた」?

米国トランプ大統領は、鉄鋼、アルミ輸入への追加関税の署名に際し、日本にも言及し、「安倍首相らは『こんなに長い間、米国をうまくだませたなんて信じられない』とほくそ笑んでいる。そんな日々はもう終わりだ」と述べたと伝えられる(日本経済新聞2018年3月24日朝刊)。

しかし、日本経済の対外関係は、本当にそれほど長い間変わっていないのだろうか。

人手不足は大都市圏よりも地方圏が深刻

総務省の労働力調査には、参考統計として「都道府県別結果(モデル推計)」がある。サンプルの制約によるデータの振れをモデルで均し、47都道府県を比べられるようにしたものだ。

最新2017年10~12月のデータによれば、完全失業率は島根、鳥取、福井の3県が全国最低の1%台前半となった。これに岩手、和歌山の両県が続く(参考参照)。いずれも超人手不足状態にあるといってよい。

高齢者の就労に決定的な影響を与える定年制

定年制は、日本の高齢者の就労に決定的な影響を与えている。

データのとれる1960年代後半以降、65歳以上の労働力人口比率(注)は長期の低下トレンドを辿ってきた(参考1)。とくに男性は5割強から3割強への大幅低下だ。

人口移動の「目標」は達成困難?

政府が2014年に開始した「地方創生」には、いくつかの数値目標が設けられている。なかでも、東京一極集中の是正を強調する「地方創生」にとって、「東京圏への人口転出入を2020年時点で均衡させる」は目玉ともいえる目標だろう。

銀行業はどこへ向かうか ~通信業と何が類似し、何がちがうか

2018.01.04

類似する銀行業と通信業の経営環境

銀行業の経営環境は、通信業に類似している。その理由は、両者とも巨大な装置産業だからだ。事業の中核にあるシステム構築に、巨額の初期費用がかかる。

この場合、サービスをより多く提供するほど、平均的なコストが下がる。経済学でいう「限界費用逓減」だ。

内部留保は「貯金」にあらず

最近、企業の内部留保の増加がしばしば批判の対象とされる。「給与や配当に回さず、内部留保をただ溜め込んでいる」といった批判だ。先の総選挙でも、「大企業の内部留保への課税検討」を公約に掲げた政党があった。

しかし、企業のバランスシートから分かるように、内部留保(=利益剰余金)は「貯金」ではない。

なぜ中央銀行の債務超過は困るのか? ~価格発見機能の低下の論点から

2017.11.01

価格発見機能とは?

異次元緩和の「出口」で、日本銀行が債務超過に陥る可能性が懸念されている。本稿では、中央銀行の財務と長期債市場の価格発見機能の関係について整理しておきたい(注1)

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