金融経済イニシアティブ

山本謙三のコラム・オピニオン

山本謙三による金融・経済コラムです。

なぜ銀行はキャッシュレスに出遅れたか:山本謙三の金融経済イニシアティブ ~電子マネーがデビットカードを凌駕する唯一の国

2019.03.01

 

日本はもともと、資金決済のオンライン化がいち早く進んだ国だった。1973年に全国銀行の内国為替システムが稼働を開始し、手形・小切手決済の多くがオンライン決済に移行した。家計の決済も、公共料金の自動引き落としや給与の振込みが広く利用されてきた。

 

だが、日々の買い物には現金決済が多く残った。現金の取り扱いは、店舗だけでなく銀行にも多額のハンドリング・コストがかかる。にもかかわらず、銀行によるキャッシュレスはなかなか進まなかった。最近のキャッシュレスも非銀行系企業が主導する。なぜこうなったのだろうか。

変貌する地方・大都市間の人口移動:山本謙三の金融経済イニシアティブ ~地方創生目標「2020年までに、東京圏への転入超ゼロ」の達成はいよいよ絶望的に

2019.02.01

「地方創生」には、いくつかの成果指標(KPI)が掲げられている。「東京圏への人口転出入を2020年時点で均衡させる」は、その一つだ。すなわち、東京一極集中の是正である。

 

「地方創生」が開始される直前(2013年)の東京圏への転入超数は、9.7万人だった(日本人移動者、注1)。その後の5年を経て、昨日公表された2018年の実績は、13.6万人の転入超を記録した。ゼロに向かうどころか、4割も拡大した(参考1)。今後多少の変動があるにしても、「2020年までに転入超ゼロ」の目標達成は絶望的といってよいだろう。

(注1)総務省「住民基本台帳 人口移動報告」は、2014年以降、外国人を含む移動者総数を公表しているが、本稿では過去と比較するため、日本人移動者のデータを用いている。 

 

景気や経済のイメージは、株価の動向でつくられがちだ。アベノミクスもその一つだろう。財政・金融両面から積極策がとられ、株価の水準(TOPIX)は、第二次安倍政権の発足後、2倍弱になった。「日本経済はアベノミクス下で復活した」とのイメージが一般的だろう。

 

では、実際はどうか。実質GDPの動向で確認してみよう。

消費増税対策はなぜ景気の平準化に寄与しないのか ~ポイント還元、プレミアム商品券は何のため?

2018.12.01

来年秋の消費税率引き上げを控え、増税対策のメニューが固まってきた。キャッシュレス決済へのポイント還元やプレミアム商品券の配布、住宅や自動車関連の減税、などだ。

多くの対策の狙いは、消費増税に伴う駆け込み需要と反動減を緩和し、景気を平準化することとされる。キャッシュレス決済へのポイント還元率も、当初想定の2%から5%に引き上げられた。対策の総額は、消費税率引き上げに伴う家計の負担増加額2兆円強に匹敵する規模になると伝えられる(2018年11月22日付け日本経済新聞朝刊)。

だが、この増税対策は景気の平準化にあまり寄与しない。なぜだろうか。

金融システムは「安定している」か ~日銀・金融システムレポートが多くを語らぬこと

2018.11.01

銀行の苦境が止まらない。全国銀行の総資金利ざや(注1)は、昨年度(2017年度)、ついに0.1%を割り込んだ。05年度のわずか5分の1の水準だ。銀行は経費を圧縮して対抗するが、追いつかない。

 (注1)総資金利ざや=貸出・有価証券等の資金運用利回りー資金調達原価(経費を含む)

ブロックチェーンは、仮想通貨を支える基礎技術だ。①改ざんされていないこと、二重払いされていないことを担保できる、②すべての履歴が記録される、③中央管理者が不要となる(そのためコストが低く、災害にも強い)といったメリットがある。

仮想通貨に限らず、このメリットの応用範囲は広い。実際、これまでも様々な分野で実証実験が行われてきた。にもかかわらず、現実に適用が開始された例は少ない。そのために、評価も、過大評価、過小評価の間を行き来する。なぜそうなのか(注1)。

 

日本銀行は、7月末の金融政策決定会合で、長期金利の変動幅を拡大させるとともに、「政策金利のフォワードガイダンス」を導入した。「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」という内容だが、過去のガイダンスとは性格が異なる。なぜ、どう変質したのか。

相続で預貯金はどう動くか ~目立つ東北、山陰、四国からの流出、沖縄、東京への流入

2018.08.22

4分の3の県から預貯金が流出する

5年前、相続の増加に伴い、預貯金がどう地域間移動するかを試算した。

本年春、国立社会保障・人口問題研究所が、2015年の国勢調査に基づく新たな地域別将来人口推計を公表した。これを踏まえて、35年までの県外流出入を改めて試算してみた(参考1)。

以下は、山本謙三がNTTデータ経営研究所在勤中に同社ホームページに掲載したものです。

なぜ転出・転入届をそれぞれの役所に出さなければならないのか ~ブロックチェーンが示唆する台帳共有のメリット

2018.06.01

ブロックチェーンの基盤:分散型台帳

ブロックチェーンは、仮想通貨を支える基礎技術だ。その基盤は「分散型台帳」にある。

ブロックチェーンでは、ノードと呼ばれる主要参加者のコンピュータをネットワークでつなぎ、その上に台帳が保管される。各コンピュータ上の台帳の内容は共通で、取引が起こる都度、すべての台帳に追記がなされる。分散型とはいえ、台帳を共有しているのと同じだ。

トランプ大統領は何を誤解しているのか ~劇的に変わる日本の国際収支構造

2018.05.07

「こんなに長い間、米国をだませた」?

米国トランプ大統領は、鉄鋼、アルミ輸入への追加関税の署名に際し、日本にも言及し、「安倍首相らは『こんなに長い間、米国をうまくだませたなんて信じられない』とほくそ笑んでいる。そんな日々はもう終わりだ」と述べたと伝えられる(日本経済新聞2018年3月24日朝刊)。

しかし、日本経済の対外関係は、本当にそれほど長い間変わっていないのだろうか。

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