金融経済イニシアティブ

山本謙三のコラム・オピニオン

山本謙三による金融・経済コラムです。

人手不足は大都市圏よりも地方圏が深刻

総務省の労働力調査には、参考統計として「都道府県別結果(モデル推計)」がある。サンプルの制約によるデータの振れをモデルで均し、47都道府県を比べられるようにしたものだ。

最新2017年10~12月のデータによれば、完全失業率は島根、鳥取、福井の3県が全国最低の1%台前半となった。これに岩手、和歌山の両県が続く(参考参照)。いずれも超人手不足状態にあるといってよい。

高齢者の就労に決定的な影響を与える定年制

定年制は、日本の高齢者の就労に決定的な影響を与えている。

データのとれる1960年代後半以降、65歳以上の労働力人口比率(注)は長期の低下トレンドを辿ってきた(参考1)。とくに男性は5割強から3割強への大幅低下だ。

人口移動の「目標」は達成困難?

政府が2014年に開始した「地方創生」には、いくつかの数値目標が設けられている。なかでも、東京一極集中の是正を強調する「地方創生」にとって、「東京圏への人口転出入を2020年時点で均衡させる」は目玉ともいえる目標だろう。

銀行業はどこへ向かうか ~通信業と何が類似し、何がちがうか

2018.01.04

類似する銀行業と通信業の経営環境

銀行業の経営環境は、通信業に類似している。その理由は、両者とも巨大な装置産業だからだ。事業の中核にあるシステム構築に、巨額の初期費用がかかる。

この場合、サービスをより多く提供するほど、平均的なコストが下がる。経済学でいう「限界費用逓減」だ。

内部留保は「貯金」にあらず

最近、企業の内部留保の増加がしばしば批判の対象とされる。「給与や配当に回さず、内部留保をただ溜め込んでいる」といった批判だ。先の総選挙でも、「大企業の内部留保への課税検討」を公約に掲げた政党があった。

しかし、企業のバランスシートから分かるように、内部留保(=利益剰余金)は「貯金」ではない。

なぜ中央銀行の債務超過は困るのか? ~価格発見機能の低下の論点から

2017.11.01

価格発見機能とは?

異次元緩和の「出口」で、日本銀行が債務超過に陥る可能性が懸念されている。本稿では、中央銀行の財務と長期債市場の価格発見機能の関係について整理しておきたい(注1)

消えたKPI実績値 ~開業率、廃業率の謎

2017.10.02

KPI実績値が消えた

政府の成長戦略のなかに、「開業率が廃業率を上回る状態にし、開業率・廃業率が米国・英国レベル(10%台)になることを目指す」というKPI(Key Performance Indicator )がある。その取り扱いが本年から変わった。

本年版(「未来投資戦略2017」)はこれを本文中には明記せず、添付の中短期工程表に一文を載せているだけだ。この結果、昨年まで併記されてきたKPIの実績値も、本年版からは抜け落ちている(参考1参照)。

円安はなぜよいことばかりではないのか ~多国籍化する中堅・中小企業

2017.09.01

グローバル・バリュー・チェーンの時代

グローバル・バリュー・チェーンの時代だ。グローバル・サプライ・チェーンとも呼ばれる。

情報通信技術の革新とともに、多くの財、サービスが複数の国や地域の手を経てつくられるようになった。OECDはその特徴を次のように述べる(参考1)。

なぜ働き方改革には「定年制の見直し」が欠かせないのか ~人口ボーナス、人口オーナスの大いなる誤解

2017.08.01

人口ボーナス、人口オーナスをめぐる誤解

「人口ボーナス」、「人口オーナス」という言葉は、しばしば誤用される。たとえば、「人口が増えれば、国民生活は豊かになる」、「人口が減れば、国民生活は貧しくなる」は、単純にすぎ、ミスリーディングだ。

銀行はなぜ苦境に追い込まれるのか ~金融政策が生み出すリスクと矛盾

2017.07.03

「預貸金利ざや」は毎年5bpずつ縮小を続け、0.25%近傍に

銀行が苦しんでいる。

本業の収益力を示す指標の一つ「預貸金利ざや」は、年5bp(=0.05%)前後のペースで縮小している。この結果、2016年度は0.25%近傍の水準へ低下した可能性が高い(注1)。90年代末の半分以下だ(参考1参照)。

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