NHK「あなたのメロディー」と古関裕而氏
2019.04.151970年夏、テレビにはじめて出たのは、高2のときだった。学校を2日さぼって、上京した。当時、NHKホールは内幸町にあった。
「あなたのメロディー」は、素人のつくった曲を専門家が編曲して、プロが歌ってくれる番組だ。ちなみに、北島三郎の「与作」やトワ・エ・モアの「空よ」などの名曲は、この番組から生まれている。
毎週5百点あまりの応募のなかから5曲が選ばれ、順に披露される。すべての曲が終わったあと、最後に「今週のアンコール曲」が選ばれ、もう一度演奏される趣向である。
~~「昨日そして明日」作詞・作曲山本謙三、歌手ペギー葉山 ~~
ペギー葉山さんはすでに「南国土佐を後にして」や「学生時代」などの大ヒット曲があり、おかげで私の出番は大トリの5番目だった。
1曲演奏されるたびに、審査員による批評がある。私の曲の担当は、日本を代表する音楽家の古関裕而氏と高木東六氏だった。
古関氏 「16歳で、はじめての曲にしては、立派だなぁ」(いゃ、いゃ、それほどでも、、、、←私 / チコちゃん5歳風)
高木氏 「いやぁ、曲に気品があるなぁ。」(いゃ、まぁ、、、、)
「きっと、あなたの(内面に)優しさがあるんだろうなぁ」(え、やっぱ、分かっちゃいますぅ?)
「ただ、全体として、、、」(ん?)
「ただ、全体として、、、魅力が全部にちと足りない。」(う、うぐぐぐ)
さて、5曲全曲の披露が終わり、いよいよアンコール曲の選定である。NHKホールに来場した観客のなかから10名が選ばれ、曲順にしたがい好きな曲1曲にプラカードをあげる。しめて10票だ。
投票がいよいよ始まった。。。
(司会の伊藤鑛二アナウンサー)「1曲目がよかったと思われる方、プラカードをお上げください」、、、、ゼロ(おっしゃ~←私)。
「2曲目の方」、、、、1票(ふむ、ふむ)。
「3曲目の方」、、、、3票(おやおや?)。
「4曲目の方」、、、、6 票(えっ、マジか!?)
かくして、私のアーティストへの道はあっさりと断たれるのだった。
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当時の私は、世間知らずだった。
テレビに出れば、電車の中で女子高生から「あの、、、この前テレビに出ておられた方ですよね」と、恥かしそうに声を掛けられるものと思っていた。
しかし、そのようなことはただの一度もなかった。
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当日の録音テープはCDに焼き直して、いまも書棚にしまってある。
古関裕而氏は、「長崎の鐘」や1964年東京オリンピック「オリンピック・マーチ」の作曲者だ。NHKの2020年度上期の朝ドラは、古関氏ご夫妻をモデルとする話に決まったという。
誰か私の役を演じてくれるのだろうか(おそらく、、、ない、、、な)。
(イラスト:鵜殿かりほ)