今年もサンタがやってくる
2019.11.17ニューヨークのサンタクロース
クリスマス・イブ。
アメリカの子どもたちは、テーブルにミルクとクッキーを並べてから床に就くという。
煤にまみれたサンタの労をねぎらおうというわけか。
20年前、ニューヨークの現地校で聞きつけてきた長女(小1)。
当日、いそいそと牛乳をコップに注ぎ、クッキーをテーブルに添えて、ベッドに向かった。
ここは一番、サンタとしても期待に応えねばならない。
夜、子どもたちが寝静まったあと、テーブルの牛乳を飲み干し、クッキーを半分頂戴した。
翌朝、目をさました娘が大騒ぎをしている。
コップの牛乳がなくなっていることに、目を丸くしている。
娘「でも、なぜクッキーは半分なんだろ?」
私「ん~、そりゃ、サンタさんも太りすぎを気にしてるんじゃないかな」
娘「あ、そっか」
日ごろ小生意気な娘もえらく納得した様子で、この日だけは素直になるのだった。
ピカチュウげんきでちゅう
サンタにとって、プレゼントの調達は大仕事だ。
当時大流行のファービー人形は品切れ続出で、ニューヨークの玩具店を何軒も探し歩いた。
それよりも少し前、東京で。
長男(当時小3)のために買いに出かけたテレビゲームは、商品名のおかげで恥ずかしい思いもした。
(百貨店のおもちゃ売り場で)
私「えっと。。。」
百貨店のお姉さん「はい、何を」
私「”ピカチュウげんきでちゅう”をくだちゃい」
ありゃりゃ、こっちまで赤ちゃん言葉になってしまった。。。
茶番
私自身も、結構長くサンタを信じていた。
クリスマス・イブには、毎年父がケーキを手に早々に帰宅した。
家族でケーキを食べ終えると、「さぁ、早く寝ろ」と急き立てる。
いつもよりだいぶ早いが、「早く寝ないと、サンタが行っちゃうぞ」の脅しに負け、あわてて就寝した。
しかし、寝付くやいなや父から叩き起こされる。
おそらく1時間もたっていなかっただろう。
父「おぃ、ちょっと起きてみろ、何か置いてあるみたいだぞ」
私「ふぁ?」
眠い目をこすりながら、枕もとにプレゼントを発見する。
私「お、お~、サンタさん、今年もありがとうございます!」
当時のお気に入りはボードゲームだった。野球盤やらアイスホッケーのゲームやら。
大急ぎで包装紙をやぶり、ひとりしきり父や兄を相手に遊んだ。
しばらくすると、母から「明日も学校なんだから、もう寝なさい」とたしなめられるのが、毎年の恒例だった。
それから時を経て父が亡くなり、自分にも子供ができて、父の願いがわかるようになった。
それにしても、兄二人もよくこの茶番につきあっていたものだ。
茶番にも、お金で買えない茶番がある。
(イラスト 鵜殿かりほ)