横浜アリーナで、桑田佳祐を聴く
2020.09.1720年近く前のこと。
中1の長男が、貯めたお金で桑田佳祐のコンサートに行きたいと言い出した。
妻は、贔屓(ひいき)のアーティストのコンサートやサッカー選手のサイン会に、手製のうちわをもって出かけるような女性である。
一も二もなく息子に賛同し、私の預かり知らぬところで話は進んでいた。
しかし、いかんせん、平日の夜である。
保護者の同伴が必要だ。
妹はまだ小さく、妻が息子を連れていくわけにもいかない。
こうなって初めて、私への期待が高まる。
私としては、本来卓袱台(ちゃぶ台)をひっくり返したいところだが、残念なことに、わが家に卓袱台はない。
仕事の結構忙しい時期だったが、なんとかやり繰りして、午後の休暇をとった。
横浜アリーナにて
新横浜駅で息子と落ち合い、夕食をラーメン博物館ですませ、いざ出陣。
聖地横浜アリーナは、開演前から熱気に包まれていた。
席は、ステージからやや遠めのアリーナ席。
会場の広さに圧倒される。
演奏が始まると、なんと、観客は総立ちである。
しかも、公演中ずっとだ。
息子も意気揚々と立ち上がり、手を振り、叫んでいる。
エ~ィ!
私も、はじめはお付き合いしたが、すぐに腰掛ける。
会場をぐるっと見回すと。。。
いた、いた、遠くに保護者らしき年配の女性がやはり腰掛けていた。
「おぉ、あなたもですか。ご苦労様です」
声なき声であいさつを交わす。
自宅で
帰宅後、疲れた私はさっさと床に就いた。
隣のリビングでは、興奮冷めやらぬ長男が、口角泡を飛ばしながら妻に報告している。
長男「いやぁ、いい。やっぱ、いいよ」
妻「おゃ、そぅかい」
長男「桑田はやっぱすごいよ」
妻「ふむふむ」
長男「横浜アリーナ全体が揺れるんだ」
妻「ふ~ん」
長男「観客も、みんな一緒にさ」
妻「そりゃ、よかった」
長男「で、さ、それはよかったんだけど」
妻「ん?」
長男「それはよかったんだけど、おやじがさぁ」
妻「ん、どした?」
長男「おやじがさぁ、ノリがわりぃんだ」
妻「ん?」
長男「ノリが悪くてさ、ずっと座ってんだ。ったく、やんなるぜ」
妻(爆)
(イラスト:鵜殿かりほ)