華麗なる柔道技 ~学校新聞 vs. 教頭
2020.10.16私自身が所属していたわけではないが、母校の中高(一貫制)には新聞部があった。
当時は、大学の学園紛争が盛んな頃。年3回、学期末に配られる学校新聞も、先鋭な問題意識を披歴していた。
とはいえ、新聞である。エンターテインメント性も意識し、クラブ活動を中心にスポーツ欄、文化欄も充実していた。
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ある年の2学期の終業式。
いつものように、全校生徒が校庭に集まり、校長、教頭の訓話を聞かされることになっていた。
しかし、その日の教頭は、、、怒っていた。
(教頭)「新聞部の諸君。君たちは何を考えとるんや。あの、柔道部が試合で全敗したって記事や。
みな真剣に練習して、試合に取り組んでるんやで。せやのに、あの記事はなんや。
スポーツに対する冒とくやぞ。相手の学校にも失礼や。」
私を含め多くの生徒は、まだ新聞に目を通していなかった。
教室に戻り、さっそく新聞を手にとる。
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のちに新聞部が語った顛末は、次のようなものだった。
(新聞部)「公式の試合やから、結果を記事にしようと思たんや。
相手校や出場選手名、勝敗までは分かってた。
でも、それだけでは記事にならへんやろ。で、決まり手と時間を適当に書いたんや」
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記事を再現すれば、あらかた次のようなものである。
教頭が怒ったのは、もちろん決まり手に、である。
しかし、教頭の叱咤にうつむていたのは、新聞部ではない。
全戦全敗が白日のもとにさらされた柔道部の面々だった。
(筆者注:友人のジャーナリスト・元読売新聞の岡本勉氏<現BEN’s オフィスウルトラ代表、帝京大学教授>に記憶を補っていただいた。
同氏は当時柔道部員で、「口車」にのって敗れたとされた当の本人である。
長じて後、新聞記者となったのは、この事件のトラウマのせいだったのかもしれない。)
(イラスト:鵜殿かりほ)