金融経済イニシアティブ

行間に広がる深い闇

2021.07.16

世の中は貼り紙だらけだ。それだけ、思いも寄らぬ行為があとを絶たないということなのだろう。

 

駅構内の貼り紙

 

以前、JRの駅の構内で「トイレ内での 長時間滞在及び飲食は  お断わりします」という貼り紙を見つけた。

 

「滞在」の2文字がやけに頭に残った。貼り紙を作る際には、どんなやりとりがあったのだろうか。

 

(以下、私の妄想)

 

上司「山本君、貼り紙の原稿できた?」

 

部下「あ、はぃ、できてます。『トイレ内での 長時間の休憩及び飲食は お断わりします』ってのは、どうでしょう?」

 

上司「ん、休憩?、『休憩』は弱すぎないか。そもそも休憩のつもりで、トイレに立てこもったわけでもないだろうし。。。」

 

部下「じゃ、『立てこもりお断り』はどうっすか?」

 

上司「いやいや、過激派じゃないんだから」

 

部下「じゃ、『居座りお断わり』はどうでしょう?」

 

上司「ん~『居座り』かぁ、ちょっと表現が露骨だな。座っているイメージが下品だ」

 

部下「え~と、じゃぁ、長居とか。辞書には『長座』ってのもありましたけど。これなんか、イメージにはぴったりなんすけどねぇ」

 

上司「なんか、しっくりこんなぁ、『長座』は相変わらず下品だし。。。ふ~む。。。よし『滞在』でいこう」

 

部下「はぁ??『滞在』っすか?なんかホテルみたいっすよ。。。こっちの方がよほど弱いように思いますけこ」

 

上司「ん~、まぁ、いい。トイレの利用者も、お客様に変わりはないからな。『滞在』でいこう」

 

部下「はぁ。。。。」

 

 

貼り紙4選

 

では、問題です。

 

(1)私の住む市の霊園の貼り紙には、服装に関する注意事項が書かれている。どんな内容か。

 

(2)東京・京橋の公衆電話ボックスのドアには、利用方法に関する貼り紙がある。どんな内容か。

 

(3)沖縄・那覇空港のターミナルには、機内持ち込み禁止に関する貼り紙があった。とくに警告された持ち込み禁止物は、何か。

 

(4)四半世紀ほど前、国会議事堂周辺の車道近くに「交差点内の駐車禁止」と書いた立看板があった。ん?交差点内の駐車禁止?「交差点内の駐車」って、何?

 

霊園

 

わが街の霊園の貼り紙には、いくつか注意事項が書かれている。服装規定もその1つだ。

 

「他の方の迷惑にならない様な服装をお願いします(裸での出入りは厳禁します)

 

ん?「裸での出入りは厳禁」?そりゃいかんだろ、墓場やぞ。

 

海岸に近いから、水着の人の出入りでもあるのか?しかし、浜辺ではないから海水浴の人はいないはずだしな。一体どういうことだ?

 

私がお参りしている隣の墓で、裸の人が合掌していたら、全裸でなくてもチト困る。

 

公衆電話ボックス

 

東京・京橋。人通りの多い歩道に、公衆電話ボックスがある。電話ボックスは今や貴重な存在である。

 

ボックスのドアには、次のような貼り紙があった。

 

この公衆電話室より、携帯電話を使って電話されている方がいます。公衆電話をご利用される方に大変ご迷惑をお掛けしていますので、おやめくださるようお願い致します。

 

おぉ。ボックス内は静かだから、ここで携帯電話をかける奴がいるわけか。なるほど。よく気がつくもんだ。ふむ、ふむ。で、電話ボックスの正式名称は公衆電話室というのか。

 

一句。
「公衆電話室、固定はいいが携帯ダメとは、これ如何に」(笑)

 

那覇空港

 

以前、友人から教えてもらった話だ。はじめて聞いたときは、半信半疑だった。

 

だが、出張の機会があり、自分の目でも確かめた。(現在も残っているかどうかは、分からない。)

 

「不発弾の機内持込、お預かりは出来ません!!」

 

そりゃ、そうやろ。

 

しかし、この貼り紙が必要になるほど、持ち込もうとする輩がいたのか。絶対に止めてほしい。

 

交差点内駐車禁止

 

四半世紀ほど前のこと。

国会議事堂近くの歩道を行けば、必ず目に飛び込んでくる立看板だった。

 

「交差点内の駐車禁止」

 

私には、その意味が分からなかった。なぜ、交差点の真ん中に駐車するのか?

 

たまたまタクシーに乗って、この交差点を通りかかることがあった。

とっさに運転手さんに聞いてみた。私の疑問は一挙に氷解した。

 

「あぁ、あれですか。無線タクシーですよ。このあたりで、障害物に遮られず、無線をうまくキャッチできるのが、あの交差点の真ん中なんで。だから、車を止めて無線を待つタクシーが多くて。。。」(携帯電話が普及する前の時代の話である。)

 

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貼り紙の行間には、私の知らない深い闇が広がっている。

 

(イラスト:鵜殿かりほ)