ニューヨークの小動物たち
2021.09.16ニューヨーク近郊には、多くの小動物が生息している。
ニューヨークと聞けば、すぐに思い浮かぶのはマンハッタンの摩天楼だろう。
しかし、電車で30分も行けば、森や丘、海に恵まれた自然がある。
マンハッタンの北東、ウエストチェスター郡もその一つだった。
木枝をリスが駆けめぐり、庭には野兎が挨拶にやってきた。
先輩からはじめに注意されたのは「高速道路ではスカンクに気を付けよ」だった。
うっかりはねようものなら、尋常でない臭いが周囲に立ち込めるという。
臭気は車にも付着し、何日もとれないとの話だった。
アライグマはラスカルか
住み始めて間もないころ、買い物に出かけようと家族で小路を歩いていた。
と、向こうから得体の知れない物体がやってきた。
ん?
「お父さん、あれなぁに?」
「ん~、おそらくアライグマ..かな。日本では、ラスカルともいうぞ(嘘である)」
「ふ~ん」
家族一同、立ち止まり、息を凝らして見詰めていた。
と、先方も、立ち止まり、こちらを凝視している。
い、いかん。
目が合ってしまった。
こういう時は視線を外した方が負けと、小さいころ教わったような、教わらなかったような。。。
しばらく動静を探っていると、敵は、突然視線を外して、一言。
「フン、よそ者か」
踵(きびす)をかえし、そのまま暗渠にもぐりこんでいった。
ほんのわずかの出来事だった。
ニューヨークの冬が、近づいていた。
***
聞くところによれば、地元では、アライグマは近寄ってはならない動物とされていた。
噛まれたり、引っかかれると、感染症など厄介なことになるという。
カブトガニとはなにものか
隣町の海辺の公園を家族で散歩していた時のことだ。
向こうから、少女が得体の知れない物体の尻尾を振り回しながら、駆けてきた。
ん?なんだ?
この奇妙な物体は?
近づくにつれ、カブトガニであることが分かってきた。
テレビでしか見たことはないが、さすがに見間違わない。
お、Oh!
これが「生きた化石、カブトガニ」か。
ん~、感動するなぁ。
こんな貴重なものを、まさか、こんなところで見られるとは!
なんと、幸運なことだろうか。
これも、私の日ごろの行いの良さか。
それにしても、日本じゃ、一部は天然記念物だ。
息絶えているようではあるようが、尻尾をもって振り回すとはなにごとぞ。
ちと注意してやらんといかんな。
しかし、いったい、カブトガニは英語でなんという?
女の子本人に尋ねるのも、ちと気が引けるし。。。
そんなことで苦吟しながら、ふと海を覗くと、、、、なんとカブトガニが浅瀬にうじゃうじゃと。。。。
ありゃりゃりゃりゃ。
なんだ、これは?
感動どころか、気味が悪いではないか。
一体、どぅしたことか?
***
早速、家に帰って、調べてみた。
分かったのは、東海岸ではちっとも珍しい生物ではないということ。
そもそも「生きた化石」というぐらいだから、生きていておかしくない。
「生きた化石」だから希少と思い込んだのが、間違いだった。
あ~、女の子を注意しなくて、よかった。
で、カブトガニは英語で”horseshoe crab”という。
直訳すれば、「(馬の)蹄鉄ガニ」か。
兜か、蹄鉄か。
いかにも、お国柄である。
ちなみに、カブトガニは、カニの仲間ではない。
では、ここで問題。
カブトガニは一体なんの仲間でしょうか???
ネットで検索すると、仲間ではないが、どちらかといえばクモやサソリに近いという。
なるほど、ひっくり返しても、食べられそうな部位がないはずだ。
(イラスト:鵜殿かりほ)