Trick or treat? ハロウィンがやって来る
2021.10.1625年ほど前。
わが家の子どもたちのNY生活は、現地校での9月新学期から始まった。
子どもも親も、慣れるので精いっぱいだ。
ようやく落ち着き始めた10月半ばのこと。
その情報は、同級生の母親からもたらされた。
「10月末のハロウィンは、学校で仮装して、生徒が街中を練り歩くのよ」。
エッ、仮装?
街中を練り歩く??
多くの家庭は近くのスーパーや玩具店で安物を買い、子どもたちを変装させるという。
生徒も先生も、毎年、早くから準備しているようだ。
小学校で
しかし、すでに10月半ばだ。
あわてて買い物に出かけるが、めぼしいグッズはすでにない。
その年のはやりはポケモンの着ぐるみだったようだが、当然、在庫はない。
う~~ん、困った。
妻がさんざん探しまわった挙句、長女(小1)の方はなんとかなりそうだった。
銀色のシルクハットとステッキもどきで、なんとか1950年代女性シンガー風を装う。
だが、長男(小4)の方は難しかった。
売れ残りといえば、テレビの人気番組「ER(緊急救命室)」のドクターだけだった。
当日。
パレードは、町中の老人やお店の人たちが、やんやの喝采を送ってくれたようだ。
しかし、長男の雄姿は、どこから眺めても医者というより、患者だった。
町で
その年のハロウィンは、本当は日曜日だった。
金曜日の小学校のパレードは、厳密にいえばフライングである。
日曜、夕方。
どこからともなく、仮装した子どもたちが、通りのあちこちに湧き出てくる。
映画「E.T.」に、子どもたちがE.T.にシーツをかけて逃がそうとするシーンがある。
あれがハロウィン当日の風景である。
子どもたちは徒党を組み、 家々を”Trick or treat?”と脅しては、お菓子をせしめる。
迎え撃つ大人も、なかなかのものだ。
クリスマスで自宅を装飾する家は多いが、ハロウィンでも装飾する家がある。
サンタクロースや雪だるまに代えて、屋根にはこうもりが飛び交い、木戸ではカボチャのお化けが踊り、庭には人間の腕(の模型)がころがっている。
玄関で子どもたちが ”Trick or treat ?”と叫ぶと、おもむろに玄関が開き、おどろおどろしい音響とともに、家の中から白煙があふれ出る。
やがて奥から魔法使いのお婆さんが、お菓子のバスケットをもって現れる演出だ。
*****
そんなわけで、長女(小1)も友達と大量のお菓子をせしめて、ご満悦。
友達「こりゃ、たくさん集まったねぇ、よしよし」
長女「うん、大成功」
友人「あ~、でも、またこのお菓子かぁ」
長女「あ、そのお菓子、おいしくないよね」
友人「うん、おいしくない。大人も、もすこし勉強してもらわないとねぇ」
長女「うん、そうだよね。」
私「。。。。。」
親が親なら、子も子
帰国してしばらくすると、日本にもハロウィンブームがやってきた。
自宅マンションに住む母親たちの申し合わせで、Trick or treat? を仕掛けていい家は、目印を出すことになった。
わが家も目印を出す。
ピンポ~ン。
妻「は~い」
子どもたちとお母さん「Trick or treat?」
妻「あら、怖い。困ったわねぇ、ちょっと待っててね」(奥へ引っ込む)
子どもたち(お菓子を楽しみに待つ)
妻(ムンクの「叫び」のような仮面をつけ、黒いフードをかぶって、登場)
一番小さな子「ぎゃぁあ~~~」
妻「あわわわ、ごめん、ごめん、ごめんなさい」
(あわてて奥に引っ込み、仮面を放り出して、お菓子を手に玄関に引き返す。謝る声がさかんに聞こえる。)
この騒動を部屋で聞きつけた長男(中1)。
居間に放り出された仮面とフードを見つけ、かぶって玄関へ。
一番小さな子「ぎゃぁあ~~~~~」
(イラスト:鵜殿かりほ)