金融経済イニシアティブ

Trick or treat? ハロウィンがやって来る

2021.10.16

25年ほど前。

わが家の子どもたちのNY生活は、現地校での9月新学期から始まった。

 

子どもも親も、慣れるので精いっぱいだ。

 

ようやく落ち着き始めた10月半ばのこと。

その情報は、同級生の母親からもたらされた。

「10月末のハロウィンは、学校で仮装して、生徒が街中を練り歩くのよ」。

 

エッ、仮装?

街中を練り歩く??

 

多くの家庭は近くのスーパーや玩具店で安物を買い、子どもたちを変装させるという。

 

生徒も先生も、毎年、早くから準備しているようだ。

 

小学校で

しかし、すでに10月半ばだ。

 

あわてて買い物に出かけるが、めぼしいグッズはすでにない。

その年のはやりはポケモンの着ぐるみだったようだが、当然、在庫はない。

 

う~~ん、困った。

 

妻がさんざん探しまわった挙句、長女(小1)の方はなんとかなりそうだった。

銀色のシルクハットとステッキもどきで、なんとか1950年代女性シンガー風を装う。

 

だが、長男(小4)の方は難しかった。

売れ残りといえば、テレビの人気番組「ER(緊急救命室)」のドクターだけだった。

 

当日。

パレードは、町中の老人やお店の人たちが、やんやの喝采を送ってくれたようだ。

 

しかし、長男の雄姿は、どこから眺めても医者というより、患者だった。

 

町で

 

その年のハロウィンは、本当は日曜日だった。

金曜日の小学校のパレードは、厳密にいえばフライングである。

 

日曜、夕方。

 

どこからともなく、仮装した子どもたちが、通りのあちこちに湧き出てくる。

 

映画「E.T.」に、子どもたちがE.T.にシーツをかけて逃がそうとするシーンがある。
あれがハロウィン当日の風景である。

 

子どもたちは徒党を組み、 家々を”Trick or treat?”と脅しては、お菓子をせしめる。

 

迎え撃つ大人も、なかなかのものだ。

 

クリスマスで自宅を装飾する家は多いが、ハロウィンでも装飾する家がある。

 

サンタクロースや雪だるまに代えて、屋根にはこうもりが飛び交い、木戸ではカボチャのお化けが踊り、庭には人間の腕(の模型)がころがっている。

 

玄関で子どもたちが ”Trick or treat ?”と叫ぶと、おもむろに玄関が開き、おどろおどろしい音響とともに、家の中から白煙があふれ出る。

やがて奥から魔法使いのお婆さんが、お菓子のバスケットをもって現れる演出だ。

 

*****

そんなわけで、長女(小1)も友達と大量のお菓子をせしめて、ご満悦。

友達「こりゃ、たくさん集まったねぇ、よしよし」

長女「うん、大成功」

友人「あ~、でも、またこのお菓子かぁ」

長女「あ、そのお菓子、おいしくないよね」

友人「うん、おいしくない。大人も、もすこし勉強してもらわないとねぇ」

長女「うん、そうだよね。」

私「。。。。。」

 

親が親なら、子も子

 

帰国してしばらくすると、日本にもハロウィンブームがやってきた。

 

自宅マンションに住む母親たちの申し合わせで、Trick or treat?  を仕掛けていい家は、目印を出すことになった。

 

わが家も目印を出す。

 

ピンポ~ン。

妻「は~い」

子どもたちとお母さん「Trick or treat?」

妻「あら、怖い。困ったわねぇ、ちょっと待っててね」(奥へ引っ込む)

 

子どもたち(お菓子を楽しみに待つ)

 

妻(ムンクの「叫び」のような仮面をつけ、黒いフードをかぶって、登場)

一番小さな子「ぎゃぁあ~~~」

 

妻「あわわわ、ごめん、ごめん、ごめんなさい」

(あわてて奥に引っ込み、仮面を放り出して、お菓子を手に玄関に引き返す。謝る声がさかんに聞こえる。)

 

この騒動を部屋で聞きつけた長男(中1)。

居間に放り出された仮面とフードを見つけ、かぶって玄関へ。

 

一番小さな子「ぎゃぁあ~~~~~」

 

 

(イラスト:鵜殿かりほ)