金融経済イニシアティブ

君は茄子の初夢を見たか?

2022.02.01

毎年、正月が来ると不思議に思い、明けると忘れてしまうことが多い。

伝統行事への知識不足がなせるわざなのだろう。。。

 

例えば、初夢の「一富士二鷹三茄子」だ。

 

私はこれまで、「いやぁ、とうとう富士山の初夢を見ちゃいましてね」という人に、出会ったことがない。「宝船の絵を枕もとに忍ばせておいたら、ついに鷹を、、、」という人にも、だ。

 

そもそも夢は、そんなに都合よく見られるものなのか。

八百屋業界の、、、

 

とくに分からないのが、「三茄子」だ。

一体、なぜここに茄子が?

 

私には、八百屋業界の陰謀に思えてならない。。。

 

[日本八百屋**協会のオフィスにて]

 

専務理事「あ~、山本君、2月早々に悪いんだけど。来年の正月のテレビCM枠がとれたんで、今からキャンペーンを考えてみてくれ」

私「は?? いいっすけど、なんで専門家に頼まないんすか?」

 

理事「そりゃまぁ、先立つものが、、な。君に頼むのは、よほどの事情と思ってくれ」

私「ん?それって、胸張って言うことっすかねぇ。。。」

理事「まぁな」

 

私「やっぱ正月らしいのが、いいすかね」

理事「そりゃ、まぁ、正月用だからな」

 

私「じゃ、「子どもにはお年玉を、雑煮には野菜を!」は?」

理事「当たり前すぎるだろ」

 

私「えっ、そうっすか?うちの田舎じゃ、すまし汁に鶏肉と餅だけ」

理事「ふ~ん、なんとも寂しい雑煮だね。しかし、もちっと具体性がないと、印象に残らない」

 

私「じゃ、「雑煮には三つ葉、シイタケ、サトイモを」は?」

専務「当たり前すぎて、話にならん」

 

私「んじゃ、「雑煮にはアスパラガス」」

理事「アホか」

 

私「じゃ、「雑煮にはナス」?」

理事「ん~、なんか雑煮から離れた方がいいんじゃないか。でも、ナスは悪くないかもな。どんな料理にも合うしな」

 

私「でしょ。前からそう思ってたんすよね。じゃ、正月つながりで「福笑いにナス2つ」」

理事「ん?それじゃ、笑顔にしかならん」

 

私「じゃ、「駒回しにナスを」、、、あ、それ、なかなかいいかも。何回転できるか全国大会で競って、テレビ取材を入れて。。。品種別がいいすかね、それとも体重別?」

理事「あのなぁ、食べ物を粗末にしちゃいかん。視聴者様から叱られるぞ」

 

1、2、3で

 

私「んん~、じゃ、「初夢にはナス」は?」

理事「お、意外なところをついてきたな。でも「初夢にナス」って、どいうこと?」

私「え~、とくに他意はありません」

理事「なんじゃ、そりゃ」

 

私「はぁ、じゃ、初夢にナスを見たら、今年1年いいことがあるとか、ないとか。」

理事「お、それいいじゃないか」

 

私「ほんとっすか?自分はちっともそぅ思いませんけどね」

理事「ヘンな奴だな、自分で言っといて。で、キャッチフレーズは?」

 

私「え~、たとえば「ナス、ナス1番、電話は2番、3時のおやつは麻婆ナス」は?」

理事「カステラのパクリじゃないか。そもそも、おやつに麻婆ナスは食わん。でも、1、2、3はいいかもな」

 

私「日本人はランキングが好きっすからね」

理事「じゃ、その線で考えてみてくれ」

 

私「はぁ、ではまず、「一姫、二太郎、三ナス」」

理事「ナスのような可愛い子が産まれましたってか。。。言うか!」

 

私「じゃ、「1本でもナス、2本でもナス」」

理事「これも、1本でもニンジン、2本でもニンジンのパクリだな、田原俊彦世代しか、分からんぞ」

私「ばれましたか」

理事「ばれとるわ」

 

私「ん~難しいっすね。やっぱプロに頼んだ方がいいんじゃ」

理事「ないものはない。無い袖を振ったら、君が出た」

私「う。。。明日から就職活動に励みます」

理事「どのみち、そのタメ口をやめんと、どこからも声はかからんぞ」

 

私「専務こそ、提案をなんでも否定してたら、部下は育たちませんぜ」

理事「お前が言うか」

 

野菜か魚か、はたまた鳥か

 

私「ん~、やっぱめでたいものがいいすかね。初夢シリーズで、めでたいものを並べる」

理事「たとえば?」

 

私「え~、「一ナス、二富士、三初日の出」」

専務「ナスが富士山より上位ってのが、ちと気になるな」

 

私「八百屋業界幹部らしくないお言葉で」

理事「俺は20年前、常識人枠で中途採用された」

 

私「うっそでしょ。じゃ、「一富士、二初日の出、三ナス」で」

理事「う~ん、まだ二と三のギャップが大きすぎるな。ツナギの2番が欲しい」

 

私「では、「一富士、二ウナギ、三ナス」では?」

理事「いや、ウナギじゃなくて、ツナギ」

私「だから、ツナギのウナギ」

 

理事「ウナギが野菜より上ってのが、気に食わん」

私「ん~難しい人だな。じゃ、「一富士、二トンビ、三ナス」」

専務理事「トンビはナスより下だろ」

 

私「あ~面倒くせ。じゃ、「一富士、二ワシ、三ナス」」

理事「そこはワシじゃなくて鷹だろ、楽天イーグルスよりもソフトバンクホークスの方ががいいぞ」

 

私「私情をはさんじゃ、いけませんぜ。そもそも去年はイーグルスの方がホークスより上だったような。。。」

理事「ヤなこと、思い出させるね」

 

一富士、二鷹、三ナスB

 

私「じゃ、「一番ピッチャー富士山、二番キャッチャー鷹、三番指名打者ナス」は?」

理事「悪くないけど、指名打者だと外国人選手みたいだな。今年は国産ナスにこだわりたい」

 

私「では、「一富士、二鷹、三ナス」で」

理事「ん~、でも語呂が悪いな」

 

私「はぁ、でも、ナスがいいって言ったのは、専務理事ですぜ」

理事「でも、語呂がなぁ。いっそのことナスを茄子にしてみたらどぅだ、「一富士、二鷹、三ナスビ!」とか」

 

私「なんすか?その「ビ」ってのは?少女A、ナスBみたいなもんすか?」

理事「ちがう、ちがう。ナスの愛称だよ。東欧の人の名で、よくジョコビッチとかタマゴッチとかいうだろ。あの「ッチ」と一緒だ」

 

私「じゃ、トンビの本名は「トン」とか」

理事「知らんわ」

 

私「カルビの本名は「カル」とか」

理事「知らんって」

 

私「じゃぁ、ネギビとかレタスビも、言うんすかね?」

理事「言わん、絶対言わん。でも、これでいいんだ」

 

私「はぁ、じゃまぁ、ここらで手を打ちましょ。「初夢は一富士、二鷹、三茄子。みんなで八百屋へ、四の五のロック」」

理事「よしよし、めでたい、めでたい。」

 

 

私「ところで、記者会見で、茄子のどこがめでたいか聞かれたら、どぅするお積りで?」

 

理事「むむ。。。そこは、それ、なによ。青森県の雪深い山里の言い伝えで、昔からめでたいものの代名詞とか言って、、、ごまかせ」

私「は、合点承知」

 

正確ではないが、大方、こんなところだろう。

 

(イラスト:鵜殿かりほ)