賢き者、あるいは、小賢しき者
2022.07.01撮影
数年前、家族4人に義母が加わり、近くの中華料理店に出かけた。
年末近くだった。
食事後、年賀状用の家族写真を撮ることになった。
店の人にスマホを渡し、撮影をお願いする。
と、妻と長女が席を離れ、最後尾の席をめぐって小競り合いを始めた。
私「ん?どした?」
妻、長女「。。。。」
私「どいうこと?」
長男「ははぁ~ん、こやつら、小顔に見せようと、後ろの席に座ろうとしているな」
私「はぁ?。。。ムダなことを」
妻「フン」
長女「フン」
内外一体化
40年近く前のこと。
当時の職場では「内外一体化」が唱えられ、「国内部門と国際部門の壁をなくす」が合言葉となっていた。
誰の思い付きかは分からないが、職場では文字どおり壁をなくすことになり、私の所属する国内部門の係は、つい立てもなしに、国際部門の係と隣り合うこととなった。
しかし、実際に並べてみると、えらく窮屈な当方と、スペースに余裕のある隣との差が歴然だった。
当時の私は係長。係員の不満を聞かねばならなかった。
係員「なんとかなりませんかね。このスペース」
私「そぅねぇ」
係員「お隣さんはえらく一人一人に余裕がありますぜ」
私「ま、隣の芝生は青く見える、ってやつかな」
係員「いやいや、本当に、スペースが違いすぎますって」
私「そうかなぁ、しかし、部門を超えて交渉をするのは厄介だなぁ」
係員「だから、係長に相談してるんで」
私「ふ~む、、、、知恵を絞れ」
係員「いやいや、そんなもんがあれば、とっくに出してますって」
私「んじゃ、こんなんはどうだ」
係員「は?」
私「何人か交替で残業し、深夜誰もいなくなったあとに、1cmずつこちらの机と椅子を隣に押し込む」
係員「はぁ?そりゃ、すぐにばれますぜ」
私「そこをだ、な、ばれないように、隣の机と椅子も毎晩7~8mmずつ動かしておく」
係員「いやいや、いつかはばれますって」
私「そうだなぁ、3~4カ月後にはばれるだろうなぁ」
係員「でしょ」
私「そこで、だ、オレの出番だ」
係員「はあ?」
私「オレが君たちの不始末につき、先方に詫びを入れる」
係員「なんのこっちゃ」
私「で、だ。詫びを入れつつ、動かした分の半分だけ戻す」
係員「は?」
私「どうせ元の場所なんか、誰も覚えちゃおらん」
係員「いやいや、誰かが気が付きますって」
私「そういう輩(やから)のために、プロジェクトの開始1~2か月後に、偶然を装いつつ、両方の係が映り込んだフロア全体の写真を撮っておく」
係員「ん?」
私「これを証拠書類として提出する」
係員「。。。」
私「どうだ、やらんか?」
係員「やりまっせん!」
私「あ、そ」
ミクロの決死圏
10年以上前に、知り合いから大学への寄付を頼まれた。
独立法人化のおかげで、自力で資金を集めなければならない様子だった。
義理もあり、*万円を寄付した。
今も昔も、わたしにとっては巨額である。
翌年夏になり、突如、寄付者のリストが届いた。
すっかり忘れていたが、おそらく最初に、名簿掲載の可否につき打診があったのだろう。
リストは寄付の金額と氏名だけ。
ペラペラめくると、*万円は最低に近い金額のようだった。
だが、寄付者の数では、この金額が圧倒的に多い。
氏名は寄付金の多い順に並べられ、同一金額の場合は「あいうえお順」だった。
私のような「や」で始まる人間は、いよいよ末尾に近い。
(くぅ~、失敗したなぁ、知っていれば、あと1円多く寄付していたのになぁ。。。)
苦笑しながら、リストを辿っていくと、、、、あ、いた、いた。
たしかに、「*万1円」の寄付者がいた。
しかも、7名も。
*万0001円 **〇〇様
*万0001円 〇△△〇様
*万0001円 *〇△〇様
*万0001円 〇*〇〇様
*万0001円 △〇◇*様
*万0001円 *△〇◇様
*万0001円 〇〇△△様
ははぁ~ん。同じことを考えた人が、7人もいたわけだ。こうなると、ちょっと浅薄にも見えるな(笑)。
そうつぶやきながら、ふと上段に目をやると。。。
うっ!
1人だけいた。
*万0002円 〇*〇*様
(イラスト:鵜殿かりほ)