お気の毒さま、アナタは決して悪くない!
2022.08.01女優に似てるって、さ
10年ほど前のこと。
妻が仲間内の会合で、声をかけられたという。
「あなた、女優の**に似てるわよねぇ」
なかなかの美人女優である。
背も高い。
歳も若い。
どこから見ても、無理がある。
「そんなこと、一度も言われたことはありません」
当人も、即座に否定する。
しかし、相手は引き下がらない。
返事を謙遜と受け止めたのか、その場にいた多くの仲間に同意を求めた。
「ねぇ、女優の**に似てるわよねぇ」
シ~ン。。。。。。。
誰からも返事はない。
みな当惑しているのが、ありありと分かる。
(しばし、沈黙)
「こんな時、どんな風にやり過ごせばいいのかが分からない」というのが、妻の弁だった。
防災訓練
30年以上前のこと。
住んでいた社宅の当番が回ってきた。
ごみ置き場の清掃や町内会に顔を出すのが、仕事だ。
早速、町内会から防災訓練の案内が回ってきた。
誰かが出なければならない。
しかし、平日の昼間である。
妻に参加をお願いする。
その夜、帰宅すると、妻がぶつぶつ言っている。
顛末(てんまつ)は、次のようなものだった。
出かけてみると、役員以外の参加者は10人程度。
ほとんどがお年寄りだった。
役員たちから長い挨拶があった後、訓練に移る。
そのなかには、けが人を担架で運ぶ訓練があった。
役員「そこのあなた、けが人役をやって」
妻「へ?、私?」
よりにもよって、一番若い人間を選ばなくても。。。
まだ20歳代後半である。
しかし、役員は有無を言わせない。
役員「ほかの皆さんは、担架で運ぶ役をお願いします」
参加者の中から救護役4名が選抜され、前後左右の配置が決まる。
役員「はい、では、出発」
参加者「よっこらしょっ」
しかし、担架は持ち上がらない。
参加者「ん?」、役員「ん?」
参加者「もう一度、せ~の」
。。。
やはり担架は持ち上がらない。
役員「じゃ、救護班を代わって、あなたとあなたとあなたとあなた」
新しい4名が指名され、配置につく。
役員「はい、出発」
参加者「よっ」
。。。
やはり担架は持ち上がらない。
役員「ふ~む、しょうがねぇな、じゃ、けが人役の人、代わって」
新たにおばあさんが指名された。
妻はすごすごと立ち上がる。
役員「はい、出発」
担架は難なく持ち上がり、所定の場所に運ばれていった。
妻は、赤面したまま、見送るだけだったという。
オレオレ詐欺
長男が高校生のころ、祖父(私の義父)から、使わなくなった自転車を譲り受けた。
ある日、自転車を押しながら歩いていると、警官に呼び止められた。
どうも、盗難車を探しているようだった。
引き取った自転車には、祖父の名前と住所と電話番号が書いてある。
長男は学生証をみせ、祖父からもらったものだと説明するが、警官はなかなか引き下がらない。
とうとう祖父に直接電話することになった。
警官「もしもし、こちら**警察の者ですが、**さんをご存知ですか。」
祖父「あ、はぃ」
と、ここで、祖父は突然、オレオレ詐欺のニュースを思い出した。
祖父「あ、え、、、あ、いぇ、なにか?」
警官「ご存知ないですか?」
祖父「あ、、、いえ、、、その、、よく分かりません」
警官「え?分からない?」
祖父「あ、いや、その、、、、なんというか」
警官「そうですか、ご存知ない。。。、」
祖父「いえ、その。。。」
警官「。。。」
長男「おじいさん、オレだよ、オレ」
祖父「・・・・(ますます、無言)」
(イラスト:鵜殿かりほ)