金融経済イニシアティブ

エクセルとパワポを使いこなす、、、ってか? ~「軸を反転する」って、何だ

2023.11.01

10年以上前のこと。

第1の職場を退職し、次に移るまでに1か月ほどのラグ(時間差)があった。

 

さて、何をしようか?

 

思いついたのは、自分ではほとんど触れたことのないエクセル(Exel)とパワポ(Powerpoint)を学ぶことだった。

五十ならぬ、六十の手習いである。

 

退職直前、尊敬する先輩に話をしたところ、「山本君、エクセルはプロに習うのがいいと思うけど、パワポは比較的簡単だよ。僕も娘に教えてもらったんだ」とのご託宣。

 

ふ~ん、そんなもんか。

早速、帰宅後、娘(当時大学生)に尋ねる。

 

私「パワポを使ったことはあるか?」

長女「そりゃそうよ、若者にとってパワポは必須科目よ」

私「んじゃ、お父さんに教えられるか?」

長女「、、、、で、いくら出す?(笑)」

私「うっ」

 

どうも尋ねる相手を間違えたようだ。

 

パソコン教室の生徒となる

 

そんなわけで、パソコン教室に通った。

 

教室では、10人ほどの若者がそれぞれ別の学習をしていた。

中にはCAD(建築業や製造業向けの設計書作成支援ツール)を学ぶ若者もいるようだ。

 

2人の講師は、生徒の学習の内容、レベルがまちまちにもかかわらず、机から机へと渡り歩いて指導していた。

 

結局、エクセルを8コマ、パワポを2コマ、合わせて計10コマ15時間学んだ。

おかげで、ごく簡単な四則計算と図表作成は一応できるようになった、、、つもりである。

 

さぁ、人口ピラミッドを描いてみよう

 

今年の夏、国立社会保障・人口問題研究所から「日本の将来推計人口(2023年推計)」が公表された。

5年に1度改訂される推計で、100年先まで見通す。

 

推計を集約したものが、いわゆる人口ピラミッドだ。

参考1は、その起点となる2020年の人口ピラミッド(実績)。

同研究所のHPには、このほか2070年の人口ピラミッド(推計)などが掲載されている。

 

(参考1)日本の人口ピラミッド(2020年実績)

(出所)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2023年)」

 

最近、この図をどうしても自分の手でつくりたくなった。

 

そうできれば、便利だ。必要なときに、縮尺を変えたり、色付けして強調できたりする。

元データはすべて公表されているので。あとはエクセルとパワポの力を借りて描くだけである。

 

早速、とりかかる。

が、すぐに行き詰まる。

 

右の「女性」の図は簡単に描ける。縦軸に「年齢」、横軸に「人口」をとって、グラフ化するだけだ。

 

しかし、左の「男性」の図は?

「人口」を示す横軸が、左右逆向きである。左から右にかけて大きな数字から小さな数字へと続く。

 

ん~~

どうやって作ればよいのか??

・・・

 

まずは、なんでも試してみるか。とりあえず縦軸「年齢」、横軸「人口」のオーソドックスなグラフを作って、180度回転してみる。

 

(参考2)オーソドックスなグラフを作り、180度回転する

 

あ、いかん。

 

軸の表示がおかしいのはもちろんだが、それ以上に、縦軸の並びが上下さかさまである。最上部が「0」、最下部が「100~」では、なんともならない。

 

そういえば、小学校で「線対称」と「点対称」は別、と習ったな。

あ~~、難しぃ。。。

 

軸を入れ替えて、左に90度回転する

 

さて、どうする?

寝っ転がって、頭の中に図形を思い浮かべてみる。

よぅ、分からんが、もう一度試してみよう。

 

手始めに軸を入れ替えてみよう。

縦軸に「人口」、横軸に「年齢」、、、と。

 

昔はタテのものをヨコと言いくるめる常習犯だったが、これが案外難しかった。

散々試した挙句、実は、オリジナルの横棒グラフを、縦棒グラフに切り替えるだけで済むことが分かった。

なんだ。。。。

 

(参考3)軸を入れ替える

ふむふむ。

 

これを左に90度回転してみる。

あ~らヨッと。。。

 

(参考4)左に90度回転。。。

 

おぉ、よいではないか。

縦軸の表示(数字)が上下あべこべだが、そこはそれ、ご愛敬ってことで。。。。

ともかく年齢の最上部が「100~」、最下部が「0」となったのは、長足の進歩だ。

 

あとは、縦軸にある上下あべこべの表示を直すことだ。

これは、「女性」の図の縦軸をコピーして、上から貼り付ければよい。

 

(参考5)縦軸の表示を、貼り付ける。

 

 

おぉ、よいではないか。

私らしく、とても上品。

 

こうなると、横軸の表示(数字)が左向きなのが気になるな。

一応、こちらも直してみるか。

パワポの「塗りつぶし」や「テキストボックス」、「貼り付け」の機能を駆使して、目分量で貼り付ける。

 

(参考6)横軸の表示を上向きに直す

じゃじゃ~ん。

 

おぉ、素晴らしいではないか。

これよ、これ。

作りたかったのは、まさしくこの図だ。

 

なんだかんだと半日かかったが、いいものができた。

自分で自分をほめてやりたい。

考え抜かないと、こうはいかんのだよ。

どんなもんだい。

自分の成長を実感した。

 

こうなると、誰かに言いたくなるな。

 

妻に言っても「あ、そ」で終わるだろうしな。

娘に言えば、「それで?」と言い返されるだけだろう。

うちの家族は、「褒めて育てる」という言葉を知らぬ。

 

喜びを分かちあえる人に早く会いたいものだ。

 

ん?「軸を反転する」だと??

 

そんなこんなで、私は、誰かに話す機会をうかがいながら、別の作業に移っていた。

 

数日後。

再びエクセルの作業をしていた。

 

何かの拍子に「軸の書式設定」を開いた。

なんとなく眺めていると、目に飛び込んできたのが、「軸を反転する」という名の機能。

 

ん?なんだ、こりゃ?

なんか、いやな予感がするな。

まさかとは、思うが。。。

 

人口ピラミッドのオリジナルの図を開き、恐る恐る「軸を反転する」のボックスに✓を入れる。

 

(参考7)軸を反転する

 

 

わ、わ、わ~。

これこそ、私が必死に作った図と同じではないか。

 

しかも、私が作成したものより、きれいだ。

作成にも、1秒とかからない。

 

うぐぐぐ。

半日かけた努力が、わずか1秒でできるとは!

 

あ~、事前に調べておくのだった。

なぜ、そうしなかったのか。私の半日を返してほしい。

 

しかも、誰も同情はしてくれんだろうな。

私が逆の立場なら、「かっかっかっ」と笑い飛ばして、終わりだ。

 

それにしても、誰かに自慢しなくてよかった。

口角泡を飛ばして説明した末に、正解を指摘されるようでは、たまったものではない。

 

人間として成長した?

んなこと、あるはずがない。

 

ただ、一つだけ言えることがある。

 

私は、一生、「軸を反転する」を忘れない。

 

(イラスト;鵜殿かりほ)