金融経済イニシアティブ

われ、独立す

2024.08.01

5年前、65歳になるのを控えて、個人事務所を立ち上げることにした。

 

押しも押されもせぬ一人事務所である。

半年前に友人が同様の活動を始めていたため、いろいろと教えてもらった。

 

このほかにも、たくさんの先輩、同輩、後輩から貴重なアドバイスをいただいた。

税理士の先生を紹介してもらったり、事務所の出費管理の詳細に助言をいただいたり、寄稿時の注意事項を教えてもらったりと、あげればきりがない。

 

知らないことだらけで、こうなると、もぅ、あらゆる知り合いに頼るばかりだ。

 

ホームページをつくる

 

HP(ホームページ)の開設も、自分では何をすればいいのか、まったく分からない。
尊敬する先輩に制作会社を紹介していただいた。

 

制作担当者「どのようなHPをつくりたいか言ってもらえれば、こちらで案を作りますから」

私「はぁ、よろしくお願いします」

制作担当者「で、山本さんのイメージカラーは何ですか?」

私「へ?、、イメージカラー?、、私の?」

制作担当者「えぇ、イメージカラー。イメージカラーが、ウェブサイトのトーンを決めることになるんで」

 

私「いや、そんなこと、考えてみたこともなかったです。ま、私を一言で表現するとしたら、白だったりして、ハハハ」

制作担当者「あ、いいですよ。白を基調としたウェブサイトは、ほかにもありますから」

私「あ、いやいや、冗談、冗談」

 

1週間の時間をもらって呻吟したが、いっこうにアイデアが浮かばない。

結局、再打合わせの当日朝、喫茶店で見かけたコーヒーフレッシュ(ミルク)の蓋の色を使うことにした。

 

私「んなわけで、エメラルドグリーンで」

制作担当者「お、ずいぶん凝りましたね。では、それで準備します。で、写真やイラストはどうしますか?」

私「は?、、写真やイラスト?、、いやいや、いつも言ってるように、ウェブサイトはあくまで原稿をアップする場として。。。」

 

制作担当者「あ、それは承知してます。承知してますが、、、、原稿だけでは、誰も見てくれないので。写真やイラストがあって、はじめて関心がもたれる」

私「へぇ、そんなもんですか?」

制作担当者「ええ、そんなもんです。人の目にふれて、はじめて読まれるかどうかが決まる」

私「はぁ、考えてみます」

 

そんなわけで、結局頼るのはやはり知り合いだ。

実兄に電話し、イラストレーターの方の紹介を頼む。

幸い、いい方を紹介してもらい、いまや「『KYな話』はイラストでもっている」との読者評も届く。

 

ルーペで立ち向かう老夫婦

 

そんなこんなで、丸5年が過ぎた。

 

悩みは、決算の際の「読み合わせ」の作業である。毎年、税務申告前にこの作業が起きる。

 

データの読み合わせといえば、宮仕えをしていたころは、同僚たちと互いに協力して行うのが常だった。

 

だが、わが事務所には、どこにも同僚と呼ぶべき者はいない。

近くにいるのは、「上司」と呼ぶべき妻だけだ。

 

しかし、まぁ、背に腹は代えられぬ。妻に頼む。

妻「はい、じゃぁ、手早くいきますよ。〇月〇日、交通費 478円」

私「ん?473円じゃないか?記録にはそう書いてあるけどね」

妻「え、そぅ、私には478円、、、、、に見えるけど」

私「どれどれ。ん~。。。。」

 

Suicaの利用履歴は文字が小さく、3か8かがはっきりしない。

ルーペを持ち出して、確認する。

 

こんなことをしているおかげで、作業は遅々として進まない。

終わるころには、クタクタである。

 

いつまで個人事務所が続くかは、もっぱら妻の機嫌による。

 

(イラスト:鵜殿かりほ)