われ、独立す
2024.08.015年前、65歳になるのを控えて、個人事務所を立ち上げることにした。
押しも押されもせぬ一人事務所である。
半年前に友人が同様の活動を始めていたため、いろいろと教えてもらった。
このほかにも、たくさんの先輩、同輩、後輩から貴重なアドバイスをいただいた。
税理士の先生を紹介してもらったり、事務所の出費管理の詳細に助言をいただいたり、寄稿時の注意事項を教えてもらったりと、あげればきりがない。
知らないことだらけで、こうなると、もぅ、あらゆる知り合いに頼るばかりだ。
ホームページをつくる
HP(ホームページ)の開設も、自分では何をすればいいのか、まったく分からない。
尊敬する先輩に制作会社を紹介していただいた。
制作担当者「どのようなHPをつくりたいか言ってもらえれば、こちらで案を作りますから」
私「はぁ、よろしくお願いします」
制作担当者「で、山本さんのイメージカラーは何ですか?」
私「へ?、、イメージカラー?、、私の?」
制作担当者「えぇ、イメージカラー。イメージカラーが、ウェブサイトのトーンを決めることになるんで」
私「いや、そんなこと、考えてみたこともなかったです。ま、私を一言で表現するとしたら、白だったりして、ハハハ」
制作担当者「あ、いいですよ。白を基調としたウェブサイトは、ほかにもありますから」
私「あ、いやいや、冗談、冗談」
1週間の時間をもらって呻吟したが、いっこうにアイデアが浮かばない。
結局、再打合わせの当日朝、喫茶店で見かけたコーヒーフレッシュ(ミルク)の蓋の色を使うことにした。
私「んなわけで、エメラルドグリーンで」
制作担当者「お、ずいぶん凝りましたね。では、それで準備します。で、写真やイラストはどうしますか?」
私「は?、、写真やイラスト?、、いやいや、いつも言ってるように、ウェブサイトはあくまで原稿をアップする場として。。。」
制作担当者「あ、それは承知してます。承知してますが、、、、原稿だけでは、誰も見てくれないので。写真やイラストがあって、はじめて関心がもたれる」
私「へぇ、そんなもんですか?」
制作担当者「ええ、そんなもんです。人の目にふれて、はじめて読まれるかどうかが決まる」
私「はぁ、考えてみます」
そんなわけで、結局頼るのはやはり知り合いだ。
実兄に電話し、イラストレーターの方の紹介を頼む。
幸い、いい方を紹介してもらい、いまや「『KYな話』はイラストでもっている」との読者評も届く。
ルーペで立ち向かう老夫婦
そんなこんなで、丸5年が過ぎた。
悩みは、決算の際の「読み合わせ」の作業である。毎年、税務申告前にこの作業が起きる。
データの読み合わせといえば、宮仕えをしていたころは、同僚たちと互いに協力して行うのが常だった。
だが、わが事務所には、どこにも同僚と呼ぶべき者はいない。
近くにいるのは、「上司」と呼ぶべき妻だけだ。
しかし、まぁ、背に腹は代えられぬ。妻に頼む。
妻「はい、じゃぁ、手早くいきますよ。〇月〇日、交通費 478円」
私「ん?473円じゃないか?記録にはそう書いてあるけどね」
妻「え、そぅ、私には478円、、、、、に見えるけど」
私「どれどれ。ん~。。。。」
Suicaの利用履歴は文字が小さく、3か8かがはっきりしない。
ルーペを持ち出して、確認する。
こんなことをしているおかげで、作業は遅々として進まない。
終わるころには、クタクタである。
いつまで個人事務所が続くかは、もっぱら妻の機嫌による。
(イラスト:鵜殿かりほ)