金融経済イニシアティブ

決めつけ刑事

2025.03.04

最近、テレビでよくACジャパンの公共広告を見るようになった。

 

俳優松重豊さんが登場する「全国こども食堂支援センター」、近藤真彦さんの「日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会」、中山きんにくん(役名は中山けんみゃくん(検脈))の「日本心臓財団」、有村架純さん(ナレーションのみ)の「プラン・インターナショナル・ジャパン」等々、種類は多彩である。

 

なかでも秀逸と感じるのが、嶋田久作さん扮する「決めつけ刑事(デカ)」だ。

 

知らない人がつぶやいてんだよ!

舞台は、警察の取調室。3人の刑事が容疑者の取り調べに当たっている。

 

容疑者:本当です、僕はやってません。

若手女性刑事:どうします?

若手男性刑事:証拠がない以上、いったん釈放ですかね。

ベテラン刑事:いや、、、、、、、(容疑者に近づき)お前がやったんだろ!

容疑者:はぁ? 証拠は?

ベテラン刑事:(バァーン、と机をたたく) 知らない人がつぶやいてんだよ!

容疑者:はぁ??


ナレーション:誰のどんな投稿もすべてを鵜呑みにして、追い込んでいく。その名も決めつけ刑事(デカ)!あなたも、こうなっていませんか。

 

以上が短尺バージョンである。
長尺バージョンには、さらに続きがある。何かの折にでも、ご覧いただければ幸いである。

 

身近にも「決めつけ刑事」が

困ったことに、身近にも決めつけ刑事がいる。

 

妻「ちょっと、トイレの電気、つけっぱなしよ」

私「ん? 本当に僕か?」

妻「あなたです」

私「どうかな、、、証拠は?」

妻「証拠?」

私「うん、証拠」

妻「この家には、いま、私たち老夫婦2人しかいません」

私「そのとおり」

妻「私は毎回電気を消してます。だから、消さなかったのはあなたです」

私「え!? あなたの消し忘れってことは?」

妻「私は毎回消してます、だから犯人はあなたです」

私「???」

 

まぁ、50%以上の確率で私が犯人であろうことは想像できる。

しかし、そもそも夫婦間の会話は、たいていが証拠に乏しい。

嫌疑不十分で、釈放されてもよさそうである。

 

だが、わが家の決めつけ刑事と闘うには、凛たる勇気と確たる証拠が要る。

残念ながら、私はどちらも持ち合わせていない。

ここは、ささやかな抵抗を示しつつ、おとなしく受け入れるのが得策だろう。

 

私「わかった、仮に、、だよ、、仮に電気がついたままだったとして、もし最後に出入りしたのが私だったとすれば、これからは気をつけます」

妻「いいえ、あなたです!」

 

 

(イラスト:鵜殿かりほ)